第46章 二人の時間
「はっ、ん、んん」
器用に片手で手綱を握り、もう片方の手で私の頭を掴み押し倒すような形で、口づける。馬上なのに何と言う安定感。こんな所でこんな事、馬もさぞかしビックリに違いない。
しかも、馬の背中は程よく揺れて、何もしなくても、自然な揺れと動きが加わって、口づけ合う手伝いをしてくれる。
(あっだめ、力が....)
体の強張りが解けたのが分かった信長様は糸をひきながら唇を離した。
「アヤ、しっかりと掴まれ」
濃厚なキスにまだポーッとする私を信長様は呼び覚ます。
「わわっ、」
クタッと信長様の片腕に支えられるようにしな垂れる自分にびっくりして、慌てて体を起こし信長様にしがみついた。
「もうっ!急にあんなこと、本当に落ちちゃいます!」
「惚けるほど良かったか?」
「っ、いじわる。急で驚いただけです」
ほんとはそのまま身を委ねてしまいそうなほど良かったけど....
あまりにも嬉しそうに、いじわるく顔をのぞいてくるから、良かったなんて言ってあげない。
「時間はたっぷりある。可愛がってやるから覚悟しておけ」
ふふんっと笑う信長様にドキドキと見惚れてしまう。
もう、何をされても嬉しいなんて、好きすぎにもほどがある。
でも、宿の壁が薄くないといいなぁと思いながら、その後も時折馬上で戯れながら、最初の目的地、小谷城に着いた。