第46章 二人の時間
「寒くはないか?」
「はい。こうしてくっついてると信長様が温かいから大丈夫です」
行楽シーズンと言うには少し寒いけど、まだ雪が降るほどの寒さではない、紅葉で色づく山の景色を眺めながら、私たちはゆっくりと湖沿いの道を進んだ。
「お市に会えるのも楽しみです」
「奴も心配しておったからな。貴様の顔を見れば安心するであろう」
「はい」
旅の最初の目的地は、お市のいる小谷城。安土からそう遠くない場所にあるから、日暮れ前にはつく予定。
「今夜は、お市のお城に泊めてもらうんですか?」
お市ともゆっくり 話したいな。
「いや、今夜は宿をとった」
「あっ、そうなんですか?ちょっと残念。ゆっくりお話ししたかったのに」
「おいっ、旅の目的を忘れるな。これは、市に会う為ではない。貴様は俺の事だけを考えよ」
残念そうにする私の襟をクイっと引っ張ると、ふんっと少し拗ねた信長様。そんな姿にきゅんとしてしまう。
「分かってますよー」
これから5日間もずっと一緒にいられるなんて幸せすぎる。
「ふふっ、幸せ」
信長様をぎゅーっと抱きしめ胸に顔を埋めると、何度も頬をすりすりとして、その感触を肌で感じた。
本当に幸せ。
「煽りよって、貴様、馬上では俺が何もできんと思っておるだろう?」
「えっ?うっんんっ」
苦しそうな表情を見せたかと思うと、信長様はいきなり深く口づけてきた。