第5章 覚醒
天主でそわそわしながら信長様を待つ。
長いような、短いような時間。
信長様のお部屋をぐるりと見回す。宣教師や堺の商人、諸大名からの珍しい献上品で溢れている。
私もずっと、この品々の一つだと思ってた。もしかしたらそうだったのかもしれない。
でも、そうじゃなくなったの?
少しは大切だと、思ってくれてるの?
私はもう、信長様を恨まなくてもいいの?
あれこれと、色々考えているうちにだんだんと瞼が重くなってきて、私は眠りに落ちてしまった。
どれくらい眠ってしまったのか、頭を撫でられる感覚がして目が覚めた。
目を開けて、ぼーっと焦点が合うのを待っていると、
「寝て待つとは、大したものだな、アヤ」
目の前に、ニヤリと笑う信長様の顔が。
「わっ、信長様!」
眠気が一気に飛んで起き上がろうとしたけど、既に私は褥に、しかも信長様の腕枕。
「動くな、じゃじゃ馬」
ふわりともう片方の腕が首の後ろに回り、腕の中に閉じ込められた。
「っ、あの......」
妙に意識をしてしまって顔を見ることが出来ない。
「どうした。今夜は睨まんのか」
「っ、まだ、睨む理由がありませんから」
俯きながら呟く。
「また、貴様の心臓がうるさく鳴っておる」
信長様はそう言いながら、私の胸に顔を埋めた。
「のっ、信長様っ?」
「静かにしろ、聞こえぬだろう」
私の心臓の上で聞き耳を立てながら、目を瞑る。
間近に迫った顔を見つめながら、心臓は早鐘のようにドキドキと打っている。
(キレイな顔)
こんな風に近くでちゃんと見た事なかったかも。
自然と手が伸びて、そっと、信長様の髪を触った。
ピクッと信長様の頭が僅かに動いた。
ゆっくりと顔を離し、私の首から腕を外し、私の上に跨る。
「あまり煽るな。どうなっても知らんぞ」
熱を孕んだ目で見つめられ、キレイな顔が近づいて来る。
目を閉じて、自然と重なる唇を受け止めた。
軽く啄んでは離し、また啄む。
胸が、キュッと甘く締め付けられる。
「あっ、んっ」
不意に声が漏れた。
「アヤ、もっと聞かせろ」
「んっ........」
下唇を舐められ、舌が唇を割って入ってくる。
深く探られ舌を絡め取られる。角度を変えながら、深くなる口づけを必死で受け止める。