第5章 覚醒
(うーーーっどうして良いのかわからない)
自室へ帰るため、廊下を歩きながらも、さっきの事が頭から離れず、ドキドキと、戸惑いと、何だかくすぐったい気持ちが行ったり来たりして、心が落ち着かない。
(こんなんじゃ話なんてできないよ)
ドキドキする気持ちが何なのか分からない
(あーもう、)
「アヤ、心の声が出まくってるぞ」
「えっ?あっ秀吉さん」
振り向くと、秀吉さんがやれやれと言った顔で立っていた。
(うそっ、声に出てたっ?)
「廊下は静かに歩けよ。まぁお前の気持ちも分かるけど」
「うっ、ごめんなさい」
反省の意を示して俯いていると
「お前、この一週間で何があった?」
「何って何?」
「いやっ、なんて言うか、お前の信長様への態度が柔らかくなった気がして」
「えっ?」
心臓がドクンと音を立てる。
「まぁ、最初はお前も戸惑ったと思うけど、信長様を受け入れる気持ちになってくれたんなら俺は嬉しい。今回の視察だって、信長様が視察先で女に興味を示さなかったのも俺は初めて見たし。それだけお前に惚れてるってことだろ?」
「っ.........」
「信長様を頼むな。俺の惚れ込んだ大切なお方だ。お前なら任せられる」
秀吉さんは嬉しそうに笑いながら、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
信長様が私の事を?
佐助君に続き、秀吉さんまでそんなこと言うなんて。
もう、本当に考えが追いつかない。
そんなこんなで、色んな気持ちで頭を悩ましたまま、夜が来てしまった。