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恋に落ちて 〜織田信長〜

第45章 心の再会



信長様は、何も言わずにそっとその傷痕に触れた。


「きれいに、塞がっておるな」

「あっ、はい。運良く骨の間を貫通したみたいで。何針かは縫ったんですけど、傷が残らないように、きれいに縫ってもらいましたから」


「もう、痛まぬのか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか」

ゆっくりと顔を近づけると、ちゅっと、その傷痕に信長様は優しく口づけた。

「これを見るのに時間がかかった」

「信長様?」

「俺の驕りが貴様の命を危険に晒した」

えっ?

「目の前で傷つき血を流し、泣き崩れる貴様を何もできず手放した」

「違いますっ、それはワームホールが...」

すっと、信長様の指が私の口の動きを止める。

「アヤ、過ぎた事を悔やむのは性に合わん。だが、貴様に辛い思いをさせた事、この命を二度救われた事、俺は忘れん」

それは、今までに見せたことの無い、後悔の色。

私は、この一年間記憶をなくしていたけど、信長様はこの一年間を、あの日の事を抱えて過ごして来たんだ。だから、私たちの再会に温度差があって当たり前だった。私はただ、会えた嬉しい気持ちばかりで、でも、信長様は違ったんだ。自分をこんなにも責めていたなんて。

光秀さんの言う通り、私はいつも何も見えてない。


「ううっ、ごめんなさい」

「何故貴様が謝る」

「ううっ、だって、信長様の気持ちを知ろうともせず、蟹が食べたいなんて、うー」

「ふっ、気にするな。あれは貴様らしくて愛らしいと思っただけだ」

えっ、そんなふうに思ってくれたの?
思いがけない嬉しい言葉に顔が一瞬にやけそうになったけど、

「やっ、そんなことは、 それに、他に好きな人が出来たのかもって疑ったし」

ここは、一番クリアにしておきたい。

「俺も貴様を疑った。」

「わっ、私は元就には抱かれていないし、好きになんてなってません。信長様だけです」

「当たり前だ、貴様は俺のものだ」

えっ、何で急にオレ様?

それにまだ私の質問には答えてくれて無い。




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