第45章 心の再会
「あっ、荷物」
急に引っ張られた手からは、荷物がバラバラと落ちてしまったけど、そんなことは御構い無しで、信長様は私を褥へと投げ出した。
「好きな奴とは誰だ、言えっ」
私の上に跨り凄い剣幕で睨む信長様。
「わっ、私じゃなくて、信長様に出来たんでしょ!」
「毛利かっ!貴様もしやあの時で」
「えっ?何言って.......」
何か、会話が噛み合ってない。
あの時って.............
「あの時って、あの日の私を疑ってるんですか?」
もしかして、あの日、元就に私が手籠めにされたと思ってる?
確かに、あの時元就はまるで私と体を重ねたみたいな言葉を信長様に向かって言った。私も動揺して説明をできないままワームホールに飲み込まれてしまった。
これはいずれきちんと説明をしなければと思ってたけど、この聞き方って
「もし、もしもあの日手籠めにされたとして、どうして私が元就を好きになると思うんですか?」
声が震える。聞いてはいけない質問だと、心が警笛を鳴らす。
「俺も貴様に同じ事をした。だから...」
「っ、」
カァーッと頭に血が上り、全てを言い終わる前に、私は信長様を叩こうと手を振り上げたが、それはいとも簡単に手首を掴まれ阻止された。
「何をする気だ、貴様」
「っ、最低!嫌いっ!大っ嫌い!」
「何だと、貴様」
信長様が掴んだ手首に力を入れると、手首に激痛が走る。
「っ、ぃたっ」
私の痛がる声に、はっ、と信長様が我に帰り、手を離した。
「天主を出ることは許さん!」
信長様はそれだけ言うと、天主を出て行ってしまった。
「っ、ひどい」
答えは分かってた。分かってたけど、違っていてほしかったのに。
私が信長様を好きなのは、抱かれたからだと思っているのかと思うと、無性に悲しくて腹が立ったけど、そんな事よりも、信長様は私が元就に抱かれてしまったと思っていて、それで私が元就を好きになると思ってる事の方が悔しい。
でも、だから、私の事を嫌いになったんだろうか。
「じゃあ、なんであんなキス」
嫌いになったのなら、中途半端な事をしないでほしかった。あの時、広間で信長様に触れられた唇はまだ熱を持ったままだ。
もう、どうしていいのか分からない。モヤモヤは溜まっていく。
スーっと、思いっきり息を吸って、叫んだ。
「信長のバカー!!!」