第45章 心の再会
天主に、信長様はいない。
さっき、家康と天主で報告を聞くって言ってたのに、どうして?
本当に、他に好きな人ができたの?
その人の所に行ってしまったんじゃ.....
「っ....」
バカだ私。
戻ってこられて、勝手に舞い上がって。
でも、信長様はとっくに新しい生活を始めてるんだ。離さないと言った手前、仕方なく天主に置いてくれてるのに、図々しく居座って....。
「とりあえず、針子部屋に移動しよう」
以前から、信長様に大切な人ができた時はそこに住み込もうと決めてたから。自分が思ってたよりも早くなったけど、私だって、記憶喪失で、信長様のいない一年を過ごしたんだ。またその時の様に戻るだけ。
必死で自分の心に言い聞かせてと言うよりは、嫌われたかもしれないと言う現実から逃げたくて、荷物をまとめることにした。
(何か足りないものは、信長様がいない時にでも取りにこればって、もう新しい人と暮らし始めたら取りにはこれないか)
もう一度、必要なものがないかよく見て、荷物をまとめ終わると、部屋を出るため襖を開けた。
「わっ、ぷっ」
部屋を出たはずが、硬い何かにぶつかった。
それが何かを確認なんかしなくても、匂いでわかる。
「信長様っ!」
「こんな夜更けに、どこへ行く」
こんな夜更けまで、どこにいたのか私が聞きたいくらいだけど、信長様の顔はやっぱり不機嫌そうで、怖くて聞けない。
「あの、針子部屋に行こうと」
「なぜだ」
「えっ?そこで住もうと思って」
「意味が分からん。なぜそこで住む必要がある」
「だって、.......」
理由は、信長様が一番分かってるでしょ?
私がここにいたら困るでしょ?
「アヤ、今思ったことを言え」
「っ、......っう、言いたく....っありません」
ついに涙を堪えられなくなった。
「なぜ泣く」
怪訝そうに、でも、頬を伝う私の涙を信長様の指が掬った。
「好きな人が、っく、うぅ、できたから」
言った後で、(あっ、信長様にって、忘れた)と思ったけど、時すでに遅しで、
ぐいっと信長様は私の腕を強く引っ張り部屋の奥へと連れて行った。