第45章 心の再会
もうこれは、決定打ではないだろうか。
信長様はもう、以前の様に私と一緒にはいたくないんだ。
もう.........一緒には..............
............それなら............食べてやる!
朝まで蟹を食べてやる!
蟹でさらに太ってやる!!
箸を取り、大好きな蟹をもぐもぐと口に運んだ。
蟹に罪はない。やっぱり美味しい。
「おかわりお願いします」
近くにいる女中さんに、蟹のお代わりをお願いした。
「クククッ随分と荒れているな」
聞き慣れた薄笑い声。
うーーーーー来たな、嫌味大臣。
「大好きな蟹を堪能しているだけです」
「そうか。御館様がお前のためにわざわざ取り寄せたんだ。有り難く頂くんだぞ」
確かにそうだ。クール便がないこの時代、運ぶのは大変だったに違いない。怒りに任せてがっついた事を少し反省した。
「ところでアヤ、お前はいなかったこの一年、どこで何をしていた。体型以外に変わったところは見うけられぬが」
うー
ただプクプクと太ってだらだら過ごしていたと言いたいんだろうけど、
「実家に戻って、針子の仕事をしておりました。体型は、光秀さんに初めて会った頃と変わってはいません」
つーんと言い返す。
「くくっ、直ぐに臍を曲げるところも全く変わらぬな。こんなに成長せぬ人物もなかなかおるまい」
「そんな事ありません。大好きなものが信長様から蟹に変わりましたから。私は今は蟹が一番大好きなんです。朝まで食べるんですから、ほっといて下さい」
光秀さんの嫌味をかわす余裕なんて全くない。気を抜いたら泣いてしまいそうで。
「ふっ、やはり変わらぬな。あの頃も、今も、お前は何も見えてないままだな」
軽く溜息を吐き、光秀さんは優しく頭を撫でてくれた。
その後も、秀吉さんや政宗、三成くんとみんなが話しかけてくれたけど、私は大食い選手権の様に蟹を食べて、そろそろ戻れとみんなに言われたから、重〜いお腹を引きずる様に天主へ戻った。