第5章 覚醒
報告が終わり、皆が広間を出始めた頃、漸く信長様が体を離してくれた。
「ひどいっ!みんなの前であんな事っ、あんまりですっ」
信長様を睨むように見上げると
「まだだ、貴様が全然足りん」
意地悪そうに笑いながら、顔を近づけてきた。
「もっと、顔をよく見せろ」
顎を持ち上げて、下唇をペロっと舐め、唇を重ねる。
「んっ........だっ、だから、みっ、皆んなが見てますっ!」
まだ、全員が広間を出たわけじゃないのに急に口づけをされて、必死に唇を離す。
「貴様が俺のものだと知らしめる良い機会だ。もっと、貴様に触れさせろ」
「っ......んっ」
口づけを受け止めながらも、恥ずかしさから、横目で広間の方を見ると、最後の人が、そそくさと襖を閉めて退散するのが見えた。
あとで、絶対政宗達にからかわれそうだけど、諦めて口づけを受け止める。
信長様が何もなく口づけて来るなんて初めてだ。この一週間、ずっと信長様の事を考えてたから、今日はやけに信長様の態度が甘く感じる。
いつもされる一方的な征服するようなキスとは違い、優しく包み込むようなキス。
角度を変え、深く探られるように、舌と舌が絡み合う。
頭が痺れてきて蕩けそう。
「ふっ、そんな欲しそうな顔をするな」
「っ........」
そんな顔してるの!私?
もう、ずっと恥ずかしすぎて、体は熱いままだ。
「今夜は適当に軍議を終わらせて戻る。貴様は先に天主で待っていろ」
もう一度チュッと軽くキスをして、いたずらっ子のように笑いながら、信長様は行ってしまった。
まるで恋人同士みたいな会話。
私は、信長様が歩いて行った方を見つめながら、ドキドキが止まらない心臓に手を当て、もう片方の手を、火照った頬を冷やすように当てた。