第45章 心の再会
「家康、戻ったか」
信長様が家康に声をかける。
「はっ、今宵はアヤのための宴会と聞いておりますので、また後ほど、報告書と一緒にお伺いします」
家康は軽く頭を下げると、自分の席へと戻って行った。
「家康と何を話しておった」
盃を手にして信長様は私に話しかけた。
「うー、また太ったって言われました」
私は徳利を持ち、信長様の盃にお酒を注ぐ。
「まだ気にしておるのか。あれは挨拶みたいなものだ」
じゃあ、綺麗になったねとか(図々しい?)、髪が伸びたねとかで良くない?
何でみんな揃って太ったなの?
「.......なんか、納得できません」
未だぶすっとする私の頭を信長様は優しく撫でる。
「そんな事言っておると、折角の蟹が食えなくなるぞ。俺との口づけよりも大事な事なのだからな」
「っ、」
またそんないじわるな言い方!
確かにあの日、ワームホールで感動の?再会を果たした私達は、抱きしめ合い、口づけを交わしたのだが、間も無く師走になろうと言う時に、雨に打たれ、慌ててたからコートも忘れ、木に引っかかって殆どショート丈となったスカート姿で、本当に寒かったの。
口づけの途中で、鼻がムズムズしてくしゃみが我慢できなくなった私は、
「ムリっ、信長様ごめんなさいっ!」
と言って信長様から慌てて口を離し、横を向いてクシュッと(本当は、思いっきりハックショイってしたかったのを、信長様の前だから頑張って小さめに抑えた)くしゃみをした。
信長様は一瞬、呆気にとられた顔をしたけど、
「はっ、貴様はやはり飽きんな」と大笑いをした。
そして、
「風邪をひく前に中に入って着替よ。暖かい汁物でも持って来させる」
と言いながら、再度私を引き寄せ口づけようとした時、信長様のその一言で、私は今夜食べる予定だった蟹料理を食べ損ねたことを思い出した。
「あっ、蟹!」
近づく信長様の顔を片手で押し止めるように、蟹と呟いた私。
「は?」
「だから、蟹です。」
「言っておる意味が分からん」
「わ〜んっ!今夜は蟹三昧だったのに〜」
あまりのショックに、私は信長様に抱きついて叫んだ。
信長様は、「分かった、蟹だな」とため息のように呟き、すぐに手配をしてくれ今夜の宴に至る。