第45章 心の再会
「わぁ〜」
目の前に、ズワイガニが乗った膳が置かれている。
ボイルされたそれは、食べやすい様に、全てのパーツが半分に切ってあり、プルプルと身が飛び出ていて、お箸が簡単に入れられそうで美味しそう。
それに、あぁ、かにみそまで。
前回、急に乱世へと戻った私は、蟹を食べ損ねるという重要なことを思い出し、信長様にお願いして、越前の漁港から蟹を届けてもらい、私が無事安土に戻ったお祝いを兼ねてみんなで広間で蟹パーティーを開いてもらうことになった。
「あぁ〜ホント美味しそう」
まだみんなが揃ってないから、目の前でお預け状態だけど、美味しく食べるから待っててね。と心の中で蟹さんに話しかけた。
膳に手を掛け身を乗り出す様に蟹の身を眺めていると、
「アヤ、よだれ」
「へっ、うそっ!」
呆れた様な声がして、慌てて口を拭う。
「クスッ、嘘だよ。あんた本当に戻ってきたんだね」
上を見上げると、一年ぶりに見る笑顔の家康が私の前に立っていた。
私が安土に戻ってから3日が経ち、殆どの人には挨拶ができていたけど、所用で駿府城に戻っていた家康とは今日、今が一年ぶりの再会で、
「家康っ!」
「お帰り、アヤ。少し、太った?」
「!?」
もーーーーーー!!
それ、その言葉、家康で武将コンプリートしたから!
信長様には、会った瞬間に言われ、次は秀吉さんの、「顔が丸くなったな」だった。
政宗は「良いもん食ってきたな、ケツがデケェ」と言ってお尻を叩かれ、
「ほう、丸みを帯びて、少しは女らしくなったか?」とニヤニヤ顔の光秀さん。
「アヤ様、私は菩薩の様で良いと思いますよ」
とこれは最早褒め言葉かも分からない三成くんの言葉。
そして最後の家康。
私、そんなに太った?
確かに、一年前は今より痩せてたけど、不健康な痩せ方だったと思うし、今だって、初めて安土に来た時とほぼ変わらないはず。
「もー、家康までひどいよ。そんなに太った?私」
「うそうそ。健康そうで、元気そうで安心したって事だよ」
クシャっと顔を崩して家康が笑った。
「それならいいけど」
不貞腐れていると、信長様が広間に入ってきて、私の横に腰を下ろした。