第44章 自分の未来へ
「有希ちゃん」
「どこ行くの?ねぇ戻ろうよ。みんな心配してるよ」
二泊三日、北陸の旅。
天気予報は晴れとなっていた為、きっと誰も傘は持ってこなかった。だから、私を追いかけて来た有希ちゃんも勿論ずぶ濡れで、
「有希ちゃん、バスに戻って。風邪ひいちゃう」
「だから、一緒にバスに戻ろう」
有希ちゃんが泣くのを初めて見た。
でも、どんなに言われても、泣かれても、私はもう左右にしか頭を振れない。
「ごめん。本当に行きたいところがあるの。私はそこにいるって、絶対に離れないって約束したから」
「誰と?彼氏いないって言ってたじゃん!」
「ごめんね。どう言えばいいのか分からないけど、本当に私忘れてて、でも、大切な人なの。彼がいる時代に残るって決めたから」
「アヤ!」
有希ちゃんが叫んだと同時に、雷が近くに落ちた。
「きゃあ!」
有希ちゃんは頭を抱えてうずくまる。
私の周りに、もやもやと霞がかかり出した。
「有希ちゃん、今までありがとう。本当に楽しかった。私も私の行く時代で頑張るから、有希ちゃんもデザイナーのお仕事、頑張ってね。有希ちゃんの作る子供服、大好きだった」
「アヤっ!」
「ありがとう。家族に、私はたくさん幸せになるからって伝えて欲しい。私は、私の未来へと帰るだけだから、悲しまないで欲しいって」
ぐにゃりとまた視界が歪んだ。
ごめんね。みんなごめんね。
そしてありがとう..............
..........................................
.........................
..................
.............バキバキバキッ!
悲しみの余韻に浸る暇もなく、大きな音と衝撃が体に走った。
チクチクと身体中に何かが突き刺さる。
「っ、いった.......」
目を開けると、枝の中。
どうやら、木に落ちたらしい。