第44章 自分の未来へ
ダッ!
慌ててバスへと戻った。
「あっ、アヤちゃんお帰り。どうだった?」
中井さんが声をかけるも、私は自分の席の上に置いたボストンバッグを手に取った。
その隣では有希ちゃんが二日酔いで寝ている。
「有希ちゃん、私行かなくちゃ」
「へっ?」
有希ちゃんが辛そうに目を開ける。
「今までありがとう。私、思い出したの」
「アヤ、何言ってるの?」
私のただならぬ態度に、周りの人も何事かと言った感じに視線を送る。
「アヤちゃん、何かあった?」
中井さんも心配して席まで来てくれた。
「違うんです」
私は話を続けながら、ボストンバッグを胸に抱え、バスの通路を後ろ向きで出口へと急ぐ。
「私、帰らないと」
「だから、何言ってんの?帰るって横浜に?」
私は首を左右に振る。
「違う、ここに待ってる人がいて、行かないといけないの」
「意味分かんないよ。とりあえず落ち着こうよ、ねぇアヤ、怖いからお願い。一回座ろうよ」
有希ちゃんは、動揺して泣きそうな顔をしてる。
バスのドアまで来て私は動きを止める。
「ごめん。ごめんね有希ちゃん。ごめんなさい中井さん、ごめんなさい。みなさん」
こんな急に、こんな短時間で分かってもらおうなんて思わない。でも、時間がないから
「私の家族に伝えて欲しいんです。ありがとうって。私は大好きな人と一緒に生きて行くって。とても幸せだから心配しないで欲しいって」
そう言って、バスのステップを駆け下りた。
雨はさっきよりも酷くなり、あの時のように土砂降りになった。
どこにワームホールが現れるかなんて分からない。でも、体は勝手に安土城跡地へと走った。
私が知ってる安土とは全然景色が違うけど、引き寄せられるように体が勝手に動く。
「あっ、」
懐かしい、石畳の階段が見えて来た。
お城はもうそこにはなかったし、私がいた頃よりも苔むしていて古びているけど、ここは何度も通った階段だ。
ここを登れば、信長様とデートの待ち合わせをした城門がある。
「アヤ!」
石段を登ろうとした時、後ろから有希ちゃんに呼ばれた。