第44章 自分の未来へ
「じゃあトイレ休憩も兼ねて、30分後に集合ねー」
中井さんがバスのみんなに声をかける。
「中井さん、突然すみません」
私は深々と頭を下げる。
「いいって、アヤちゃんが歴史好きだっての知らなかったから意外だったけど、安土城、見てみたかったんでしょ?あまり時間取れないけど行っておいで」
「ありがとうございます。ホントすみません」
私はもう一度頭を下げて、バスの外へ出た。
バスは、安土城跡の近くにある資料館のパーキングに駐車をした。
何が、こんなに自分を惹きつけるのかが分からないまま、私は導かれる様に、資料館に足を向ける。
入館料を払い中に入ると、当時の安土城の最上階を再現したものが目に入った。
「あっ、」
煌びやかな装飾が施されたその部屋は、見覚えがあり懐かしく感じた。
でも、なんかちょっと違うような....
家具の配置に違和感を覚える。
館内をもう少し歩いていくと、男性と女性物の着物がそれぞれ展示されていた。
説明書きにはそれぞれ、【信長が着用した浴衣 】【女性の着物】と書いてある。
......やっぱり懐かしく感じる。
それに、
「この着物確か....」
『あのっ、 ...着物、着て下さってありがとうございます』
そんな事あるはずないのに、この着物は私が仕立てた物の様な気がする。
『動きやすくていいな。今日みたいに暑い日にはちょうどいい』
そう言って、私はこの着物の人とどこかへ行かなかったっけ?
「この浴衣、実際に織田信長が着用していたとされるものなんですよ」
真剣に見入る私に気づいた学芸員の方が声を掛けてくれた。