第44章 自分の未来へ
「あー、頭痛い」
昨夜の宴会でも、かなりな量のお酒を飲んだ有希ちゃんは、頭痛と胸焼けに苦しめられながらも、荷物をまとめて、ロビーへと歩いていた。
「あれからまた飲んだの?私は先に寝ちゃったからあれだけど」
「あの後、飲み足りないメンバーとそのまま二次会でね。あーでも、飲まなければ良かった。マジやばい」
ペットボトルの蓋を豪快に開けて、ミネラルウォーターをガブガブと有希ちゃんは飲んだ。
チェックアウトを済ませ、昨日と同じ観光バスに乗り込む。
今日は今から近江八幡市を巡り、彦根城を見て、黒壁スクエアで散策をした後に、福井県へと行き蟹三昧の予定。
この時期だけ食べる事のできるメスのせいこ蟹が私の一番の楽しみ。
横に座ってる有希ちゃんは、二日酔いの上に、バスの揺れも相まって、辛そう。
声をかけるのも阻まれたので、窓の外に映る景色を見ていた。
目に映る道路標識を見ていると、〈安土〉と言う地名を見つける。
ドクン
音が、みんなに聞こえたんじゃないかと思うほどに、心臓が跳ねた。
しばらく行くと今度は
〈安土城址〉の看板
『アヤ』
ドクンッ
な........に?
『アヤ』
誰かが、私を呼んでいる。
声だけじゃない。安土城を、私は知ってる.....気がする。
看板はどんどん遠ざかっていく。
行かなければ
理由は分からないけど、そう思った。
立ち上がり、幹事の中井さんの元へと行く。
「あの、中井さん....」