第5章 覚醒
暫くして、信長様が広間に入ってきた。
皆一様に頭を下げる。
私も同じように頭を下げていると、
「アヤ、ここで何をしておる」
一週間ぶりに聞く、低く威厳に満ちた声が頭の上から降ってきた。
「信長様、お帰りなさいませ」
畳に手をつき挨拶をすると、
「来いっ」
「わっ!」
グイッと手を引っ張られ、上座へと連れていかれた。
(みんな見てるのに、恥ずかしい)
顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「貴様はここにいろ」
強引に信長様の横に腰を下ろさせられた。
もう、恥ずかしくて顔をあげられない。
俯いている私に構わず、信長様は広間に集まった人々に向かって声を掛けた。
「皆の者、出迎えご苦労。今回の視察について、詳しくは秀吉の方から報告がある。秀吉っ」
「はっ!」
秀吉さんが、今回の視察の報告をしているけど、全然頭に入ってこない。
なぜなら、信長様が脇息代わりに私にもたれながら、秀吉さんの報告を聞いているから。
信長様の髪が僅かに頬にあたる。
うーっ......これは一体何の罰ゲーム?
秀吉さんも目のやり場に困った様子で報告を続けている。
政宗と光秀さんはニヤニヤしてるし、家康はため息をついてる。
「秀吉、もっと大きな声で話せっ、アヤの心臓の音がうるさくて聞こえん!」
「っ.................」
なんて事をっ!
皆んながこっちを見てるのが分かる。私は身体中に火が灯ったみたいに熱くなって、広間で報告が終わるまで、顔を上げられず俯いたままでいた。