第44章 自分の未来へ
「怒られたって誰に?お風呂って?」
有希ちゃんがビール缶を片手に興味津々で続きを聞いてくる。
「あっ、うん、..........何だっけ?」
『こやつは酒が飲めん』
誰か、そう言って飲んでくれたよね........
『貴様といると、初めてばかりだな』
誰か........って、だれ?
「ごめーん。忘れちゃった」
「はぁ〜?てっきり元カレとの話だと思ってのに」
「ちがうちがう。彼がいたのなんて学生の時で一人だけだし、随分昔のことだし、彼との話じゃないよ」
「なーんだ、アヤ可愛いのにそう言った話全然しないからさ。結構狙ってる人いると思うんだよね。ねぇ、今度合コン一緒に行こうよ」
「ダメダメ。そんなとこ行ったら殺されちゃうからやめとくよ」
「........だから、誰に?」
『アヤ、貴様もとんだ悪女だな』
「えっ?.....だから.....」
『貴様は信用ならん。確認させろ』
ドクンっと、心臓が跳ねる。
「あっ......お、お家の人....とか?」
「なぁんだ、そんなオチ?結構家の人厳しい系?」
つまんないといった感じに有希ちゃんはぐびぐびっと缶ビールを飲み干した。
「プハァ!お代わりもらってくる。中井さ〜んお代わり〜」
有希ちゃんが席を立った後も、ドキドキが止まらず胸がぎゅっと締め付けられたままだ。
甘くて優しい声。
その声を聞くだけでいつも心臓がどきどきなりっぱなしで、それを笑った人がいなかっただろうか。
「っ、いたっ、」
また頭痛だ。何かを掴みかけようすると、必ず頭痛に遮られ、何も考えられなくなる。
大切な事を思い出さなくてはいけない気がするのに.............
その後、缶ビールを3本抱えて戻ってきた有希ちゃんは、目的地の米原駅に着く頃には全部飲みきっていた。