第43章 大切なもの
高台になった所から、黒くて長い物が信長様に向けられている。
あれは、銃⁈
銃を持つ人物はすでに引き金に手を掛けていた。
「信長様危ないっ!」
佐助君の手を払いのけ、信長様の所へ走った。
ドンっと言う発砲音と、自分の体を激痛が走ったのは同じように感じた。
「あっ...........」
あと少しで信長様に触れられるところで、体は力を失い、まるでスローモーションの様にデッキへと倒れて行った。
ドサッ!
「アヤ!」
目を見開き驚いた信長様の顔。
私の元へ来ようとするも、鉄砲の音を合図に敵が総攻撃を仕掛けてきて、その道を阻まれた。
佐助君も信長様の援護に回って戦っている。
雨がさっきよりも強まって、こんな季節なのにゴロゴロと雷の音まで聞こえ始めてきた。
「アヤ!」
敵をなぎ倒し、戦いながらも私の名前を呼ぶ声がする。
「うっ.....」
左の肩を撃ち抜かれ、火傷をした所をグリグリと踏みつけられているかのように激痛が走り、痛みで意識が朦朧としてきた。
倒れる自分の目には、どんどんと流れ出る自分の血と、それを洗い流すかのように、デッキに跳ねながら血を流していく雨。
私、このまま死ぬのかな。
死ぬなら歳をとってって、ずっと思ってきたのに。
でも、出会ってしまったから。
自分の命よりも大切な人に。
そんなこと思う日が来るとは思ってなかった。
でも、何よりも愛おしくて大切な人。
いつも、与えられるばかりの私だから、せめてあなたの命は守りたかった。
「アヤっ!」
全ての敵をなぎ倒して、信長様がこっちへ向かってくる。
「のぶ....なが...さま」
私も必死で腕を伸ばし、指を伸ばした。
その時
ピカッ、ドオーーーン!!!
私達を引き離す様に間に雷が落ち、まるで船を真っ二つにしたような大きな亀裂が目の前に走った。
「アヤさん、ワームホールだ!そこから逃げるんだ!」
佐助君の叫ぶ声がする。