第43章 大切なもの
「ワーム.....ホール?」
って、うそ.....今、ここに?
もやもやと自分の周りに霧が立ち込め始めているのに気づいた。
この時代に来た時と同じ現象。
やだ、帰りたくない!
「アヤ!手を伸ばせ」
亀裂の向こうから信長様が手を伸ばして叫ぶ!
「のぶ....」
血を流しすぎたのか、さっきまで伸ばしていた手にもう力は入らない。
「くっ、アヤ、手を」
声は聞こえるけど、もう周りは霧で覆われて何も見えない。
「っ、やだ、のぶながさま....」
もう、離れたくないよ。
「アヤ!」
「いきたくない....のぶ....」
「アヤ行くな!アヤ!」
あんなにいつも冷静な人が、声がかすれるほど私の名前を呼んでいる。
助けて、信長様。
離れたくない。
離れたくないのに。
「アヤーーーーーー!!」
信長様の叫び声を最後に、私の視界はグニャリと歪み、私はそのまま飲み込まれた。
..........................
『信長様っ』
『どうしたアヤ』
『お願いがあるんです』
『何だ言ってみろ』
『私を、離さないで下さいね』
『貴様は阿呆か。一生離さんと言っておる』
『約束ですよ』
『約束も何も、俺の側を離れることは許さん』
『ふふっ、分かってます』
でも、聞きたかったんだもん。
だって、信長様の事が大好きだから。
だから私を、一生離さないで下さいね。
約束ですよ
信長様.......................