第43章 大切なもの
「あの、」
でも、聞かなければと思い口を開くと、
「幸が、実は武将の真田幸村ってのはもう聞いた?」
察した様に佐助君から話を振ってくれた。
「っ.....うん」
幸と聞いて、胸が軋む。
「その様子からして、今回君を攫ったのも、罠にはめたのも、幸村だって聞いたんだね」
「.......うん」
本当は、まだ信じたくない。幸のあの笑顔を思い浮かべると、嘘だったとは思えないから。
「実は、俺も君に隠してることがあるんだ」
着物を整え終わった私を見て佐助君は真剣な顔を向けた。
「前に、俺にも上司がいて苦労してるって言ってたの、覚えてる?」
「うん」
「あの上司って、上杉謙信の事なんだ」
「えっ....と、」
確かさっき聞いた気が....
真田幸村に武田信玄に、朝倉の次は、上杉謙信?
たった数時間で歴史の教科書何十ページ分もの知識を詰め込めと言われたみたいで、必死で頭の中の引き出しを探す。
「あっ、幸と武田信玄が身を寄せてる人だ」
何とか引き出せた。
「そう。その人」
「えっと、その人が何だっけ?」
慌てる私にクスッと佐助君は笑うと
「俺の上司なんだ」
と、佐助君は言う。
「あっ、そうなんだ」
...................えっ?
「あっ、うそ、じゃあ佐助くんは信長様の敵って事?」
「つまりはそう言うことになるかな」
肩をすくめて佐助君は笑った。
でもそれって....
「あっ、でも君を助けに来たのは本当だよ。敵同士なのは俺の上司と信長であって、俺にとってアヤさんは同じ500年後の未来から来た大事な友達だ」
私の不安を感じ取ったのか佐助君はすぐにフォローしてくれた。