第43章 大切なもの
「だっ、誰?」
「俺だよ、佐助」
部屋に入ってきたのは、同じ500年後の未来からやってきた佐助くんだった。
「佐助くん?どうしてここに」
「アヤさんを助けにって、ごめんアヤさん、ちょっとだけ失礼するよ」
佐助くんはそう言うと、顔を反らしながら、私の着物の乱れを直してくれた。
「っ、あっ..........ごめん.....ありがとう」
襲われたままの姿で手を縛られてしまったから、それはもうあられもない姿で...........
気まずい沈黙が少し流れた
「あっ、まずは紐を切るから動かないで」
「あっ、うん」
佐助君は、「ベッドはもうこの時代にあったんだな」なんて感心しながら短刀を取り出すとザクッと一気に縄を切った。
ぱらっと手が漸く自由になり、私は慌てて体を起こした。
「あっ、っ...」
峰打ちされた首が、やっぱり酷く痛んだ
「アヤさん大丈夫?ちょっと見せて」
私の首筋にくっきりと赤く腫れあがる様についた峰打ちの痕に、佐助くんがそっと触れた。
「女性にこんな事、酷いな」
あまり表情に変化は無かったけど、声は僅かに怒っているっぽい。
「佐助君はどうしてここに?って言うか、ここがどこかを教えて」
私は解き取られた帯を拾って乱れた着物を直す。
佐助君は目をそらしながら私の質問に答え出した。
「アヤさん、あまり時間がないから手短に話すよ。アヤさんの乗せられているこの船は、今越前の港に停泊している」
「越前?」
「現代では福井県のあたりだ」
ここは少し前までは、朝倉という人の領地だったけど、今は信長様が手中に収めた所だとも話してくれた。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
本当は、一番聞きたいことがあるけど、どう切り出していいのか分からない。