第43章 大切なもの
元就が部屋を出て行った後、私は必死に括り付けられた手首を動かして、紐を取ろうとしていた。
外では戦いが繰り広げられている音が続いている。
早く逃げて信長様の所へ行かないと
傷つく人が少しでも減るように、早くここから逃げて、信長様と安土に帰りたい。
引っ張っても、僅かに伸ばせる指を伸ばして紐を緩めようとしてもその度に結び目がキツくなり、手首に食い込むばかりで緩みそうもない。
「早くしないと」
元就が戻れば今度は本当に抱かれてしまう。
信長様が助けに来てくれて、すんでのところで助かったこの体を今度こそ守らなくては、信長様に会わせる顔がない。
もう既に、色々されてしまった事を知ったら.....それだけで様々なお仕置きが待っていそうで、それはそれで恐怖だ。
でも、早く会いたい。
もう何日も信長様に会っていない気がする。
もう二度とお城から出れなくても構わない。
早く信長様の腕の中に帰りたい。
焦りばかりがこみ上げて、仰向けで頭の上で括られた手首を何とかする方法が思い浮かばない。
「もうっ!」
苛立ちを紐にぶつけていると、
「アヤさん?」
聞き覚えのある声がした。