第42章 それぞれの思い
「......どうして、そんな二人が私を?」
「?お前、信長のとこに来る前まで何してたんだ。武田と織田の戦を知らないってのか?」
元就は信じられないと言った感じで私を見下ろした。
「っ、分からないよ。信長様に会うまでは、戦とは関係なく生きてきたから。それに、幸の事だって今知って、信じられないのに」
未来から来たはずなのに、私は何も情報を持ってない。
だって、この時代の人物像は、写真がある訳じゃなく絵だけで、私の記憶に残っているのは、信長様と、秀吉さんと、家康の三英傑と言われる3人を描いた絵と、あとはフランシスコザビエルと江戸時代になって浦賀にやって来たペリー位だもん。(あっ、眼帯してたら政宗も分かるかも)
だから、幸が実は武将の真田幸村だったなんて知るはずがない。
「信長様と、幸達にどんな戦いがあったの?」
「簡単に言えば、甲斐の大名、武田信玄が、戦で信長に負けたってだけだ。武田の領地は織田の領地となり、武田の者は皆散り散りになった。武田信玄も病死したって聞いてたけど、上杉謙信の居城に真田幸村と身を寄せていて、信長に復讐する機会を狙ってたってわけだ」
「幸も、その時一緒に戦ったの?」
「あいつは、信玄の一番の家臣だからな。武田は騎馬隊を率いた無敵の軍勢だったが、信長率いる鉄砲隊には敵わなかった」
戦には勝敗がつきものだ。
負ければ全てを失う。
そんな事分かってる。
でも、幸は私とどんな気持ちで話をしてくれていたんだろう。
口は悪いけど、照れたように笑う優しい友達だって思ってた。
こんな風に、私を攫うつもりで友達のふりをしてくれてたの?
疑いたくないし、認めたくないけど、幸が信長様を呼び捨てにしたり、よく知ってるっぽい謎が何だか解けた気がした。
「幸達は、私を囮に信長様をここに呼び出すつもりなの?」
「お前を囮に信長を呼び出すのはあってる。だが、信長はここには来ない」
「えっ?」
「アヤ、お前は俺と一緒に俺の城へと行く」
ギシっと、私の横たわる褥が軋む音がして、元就の顔が近づいてきた。