第42章 それぞれの思い
「どうしてあなたが?」
「ここは、俺の船の中だ。お前、攫われたの覚えてないのか?」
「おっ、覚えてます。船って、あなたが私を?ここは一体...っいっ」
頭よりも首すじがズキズキする。
「おいおい、首すじに峰打ちをくらった上に、薬で眠らされてたんだ、しかも馬で移動して無理な体勢をさせたからな。あまり動くな」
元就はそう言うと、寝てろと言うように、私の体を褥に押しつけるように倒した。
「峰打ちって.....」
そうか、あの時...襲われた時、斬られたと思ったけど、峰打ちだったんだ。
痛みのする首すじに手を当てると、熱を持ってドクドク脈打つのが分かる。
「そんなに痛むのか?まぁお前、やわな作りしてっからな。何か、冷やす物を後で持ってくる」
元就のそう言う目は優しい。
優しい......けど.....
「私を攫ったってことは、また、信長様と取引をするんですか」
前科があるだけに、油断できない。
優しさに騙されないように、私は元就を睨みながら質問をした。
「お前を攫ったのは事実だが、今回は取引はしない」
「えっ?」
「今回は武田と組んだ。お前を人質に戦をするのは織田と武田だ」
何を.....言ってるの?
「訳分かんねえって顔だな」
分からないよ。
「お前、騙されたんだよ。あの呉服屋にいた行商に」
呉服屋の行商って、
「.............幸?」
「アイツ、そんな風に名のってやがったか」
「違う...の?」
自分の体から血の気が引いていくのが分かる。
「あいつは、真田幸村。武田信玄の家臣だ」
「えっ?」
真田幸村?武田信玄?
どっちも、聞いたことがある。ドラマにもなる位に有名な武将。
でも、歴史に疎い私は二人の事を全然知らない。