第41章 思惑 〜元就編〜
その日から、やたらとアヤに似た女ばかりを抱いた。
だが、腕に残るあの感覚と匂いが、どの女も違うと言ってくる。
アヤを抱きたい
そんな感覚に囚われていた頃、俺の所有する貿易船に、ある男女が乗り込んできた。
聞けば、安土から逃げて来て、もうこの日の元に未練はなく新天地を目指すのだと言う。
どうやって逃げ出したのかを聞くと、敵方である安土の姫が脱獄を手伝ってくれたと言う。
すぐにアヤだと思い聞いてみれば、その通りで...
そんな人の良いお姫さんは、アヤしか思い当たらなかった。
女の方が、アヤを知っているのなら、お礼の手紙を渡して欲しいと言い、俺はらしくもなくその手紙を受け取った。
アヤに会う口実ができた。
そんな事で喜んでいる自分に驚いたが、直ぐに安土へと向かった。
安土はあれからかなり警備を強化していた為、俺は腕に痛手を負ったが、とりあえず、追っ手を巻いて、アヤが通るであろう道の路地裏に身を隠して待った。
暫くすると、呑気そうな女が道を歩いて来た。
久しぶりに城下で会うアヤは、少し痩せた様にも見えたが、それがまた彼女の美しさを引き立たせていた。
口を手で塞いで路地裏にある一軒の建屋の中にアヤを連れ込んだ。
本当はそのまま連れ去りたかったが、予定外に傷を負っていた為、諦める事にした。
まぁいい、機会はこれからもある。
ただ、手紙を渡すだけでは面白くない俺は、あの時の感覚をもう一度感じたくて、アヤの隙を突いて腕に抱きしめた。
背中から抱きしめたアヤは、やはり折れそうに細くて華奢で、甘い香りがした。
「.......っ、離して下さい」
「まぁ、そんなつれない事言うなって。アヤお前、赤子みたいに甘ったるい匂いがするのな」
アヤの髪に顔を埋めて匂いを吸い込むと、身体がもっとアヤに触れたいと疼いた。