第41章 思惑 〜元就編〜
今まで会った、どんな姫にも、女にも当てはまらない女。
子供と大人の狭間にいる様なあのお姫さんに、くすぐったい感覚を覚えた。
当初は、アヤを人質に船を通す条件を突きつけるつもりはなく、あくまで信長を夢中にさせた女を見てみたいだけだったが、気が変わった。
信長が一体どれほどあのお姫さんに溺れているのかを、知りたくなった。
だから、金平糖を餌にアヤをおびき出し、攫った。
どんな風に生きて来たら、こんなに簡単に会ったばかりの奴を信じる事が出来るのか、出されたお茶を疑いもせず飲む事ができるのか。
アヤに付いた護衛の奴らを片付けるのは多少骨を折ったが、アヤは簡単に攫う事ができた。
薬で眠らされたアヤを牢屋に運ぶ為抱き上げると、余りにも軽くて驚いた。
昨日同様に、甘い匂いがアヤから香ってきて男心がくすぐられたが、その時はまだ、信長の方への興味が優っていた為、アヤをどうこうしようとまでは思わなかった。
数刻後
信長は、自分の片腕とまで称される豊臣秀吉と明智光秀を率いてアヤを救いに来た。
結論から言うと、俺はまんまと信長に騙され、アヤを引き渡してしまい、しかも商談もご破算となり、大きな損失を生む事になった。
だが、天下を狙う男がたった一人の女の為に自ら動いた。
その事実が俺を興奮させ、この余興は十分に俺を楽しませてくれた。
それで良かったはずなのに、
俺の腕には、あの時抱き上げたアヤの温もりと甘ったるい匂いが消える事なくいつまでも残った。