第41章 思惑 〜元就編〜
「私の事をお姫さんって、あなたは、ここの人では無いみたいですが」
警戒心を露わにするアヤ。
「あっ?綺麗な身なりしてる奴は皆お姫さんだろ?違うのか?」
咄嗟に誤魔化した。
「私はただの針子です。反物を拾って頂いてありがとうございました」
針子?その情報は聞いてねーな。
警戒心から嘘をつく様な女ではないと思うが、針子は想定外で、疑問に思いつつも、アヤに拾った反物を渡した。
「驚かせたなら悪かったな。俺は貿易商で今朝この港に着いたんだ」
「西の方からですか?」
「何で西と分かる」
「僅かですけど、えーと、あっ、安芸だ。安芸の言葉に似てるなって」
もしや、俺を知ってる?
一瞬、警戒したが、ただの偶然だろうと思い、
「正解だ」
と言った。
「俺の故郷を言い当てた代わりにいい事教えてやるよ。お姫さんの持ってるその金平糖、俺の知り合いの商人が三日後、南蛮からもっと変わった金平糖を持ってやって来る。貴重品なんだが、取っといてやるから買いに来いよ。場所は....」
紙と筆を取り出して、お店の地図を書いて渡してやった。
「ほらよっ」
「わぁ。ありがとうございます。」
アヤは嬉しそうに渡された地図を受け取った。
「三日後だぞ。早く来ないと他の客に売っちまうからな」
「えっ、必ず行きますから取っておいて下さいね」
さっきの警戒心は何処へやら。完全に俺を信じた様に無邪気な笑顔を見せた。
「じゃあもう行きな。明るいとは言えあまり路地裏に来るのはやめておけよ」
そう言って、俺は表通りの方にアヤの背中を押し出した。
アヤは軽くお辞儀をすると、もと来た道を歩いて行った。