第41章 思惑 〜元就編〜
安芸の小さな国人領主の息子として生まれた元就は、一代で毛利を中国地方全土を支配する大きさに成長させた。
自分と同じ様に、尾張の小国を破竹の勢いで成長させた織田信長のその残忍な手口に、敵とはいえ面白い奴だと興味を惹かれ、いつしか、心ゆくまで殺し合いたい程、信長は自分の中で気になる存在になっていた。
そんな時、信長のある噂を耳にした。
本能寺で信長の命を助けた女をそのまま城に連れて帰り手篭めにしたらしい。
ここまでなら、武将であればあり得る話だった。
そんな話は決まって、手篭めにされた女が直ぐに飽きられ捨てられ、家臣の誰かに身請けされると相場は決まっていたが、噂はそれだけでは終わらなかった。
信長が、女に溺れている。
片時も離さず、溺愛している。
魔王とまで恐れられた男が夢中になった女
気にならなかったと言えば嘘になるが、安土から元就の領土は遠く離れていて、おいそれと見に行くことはできない。
そんな折、デカイ商談が持ち上がった。
だがそれには信長の領内である港を通ることが必須条件。
危ない橋を渡ると知っていても、元就は好奇心を抑えられず、その商談を呑み、安土へと向かった。