第40章 思惑
「信長様っ!俺も一緒に行きます」
早馬の手配を済ませた秀吉が、馬に跨り出発しようとする俺の元へと走ってやってきた。
「貴様は城の留守を守れ。兵站などは三成に任せてある」
「ですが!」
「武田に上杉だけでも厄介なのに、毛利も絡んでいるとなると、一筋縄ではいかんだろう。こことて、何が起こっても不思議ではない。貴様が守るんだ」
本当は秀吉も皆と同じ様に行きたいが、信長の命令に背くわけにはいかない。
「はっ、」
秀吉は心を抑え、頭を下げ返事をした。
「では行ってくる。留守を頼んだぞ、秀吉」
「っ、アヤに会ったら伝えてください。勝手に城下を歩き回って俺が怒ってたって、帰ったら説教が待ってるって」
「ふっ、そうだな」
軽く笑みを浮かべると、信長は馬の手綱を力強くしならせ駆け出して行った。
安土から越前に行くには、山道をひたすら抜けるしかない。
だがそれは敵とて同じ事。
しかもあっちは人質を連れている。
身軽な分、相手よりも早く行動ができる。
信長は馬を走らせながら神経を研ぎ澄まし、ここまでの一連の流れを頭の中で反芻する。
武田信玄の狙いは、アヤを人質に俺をおびき出すこと。
春日山城に身を寄せているのであれば、上杉との国境付近の支城に俺を呼び出すに違いない。
しかし、そこにアヤはいない。
なぜならアヤは毛利が攫っていくからだ。
俺を、織田軍を滅ぼしたい武田、上杉と、更にアヤを手に入れたい毛利。
いつ、どの様な形で奴らが手を組んだのかは分からんが、互いの利益が一致した。
冬に入れば、奴らの動きが鈍るのも同じこと。
その前に、俺を潰そうと行動に出た。