第40章 思惑
アヤに何かあった時、身を呈して守るのが、いつもの護衛の者達で、それとは別に、アヤに何かがあった時、何よりも信長に知らせることを最優先に、護衛の者達にも気づかれぬ様にアヤに付かせていた。
これは、前回毛利元就に護衛の者を全滅させられ、アヤの居場所を突き止めるのに時間がかかった事から、信長が新たに付かせた忍である。
「影を付けておいて正解だったな」
城下において、アヤに私怨で刃を向けるものはまずはいないであろう。仮にいたとしても、護衛の者達で十分に防ぐ事が出来る。彼らはそれくらい腕の立つ者達であった。
ただし、俺の命を、織田軍を滅ぼすべく戦の駒としてアヤを攫うとなると、その場で命を奪うことはまず考えられない。
であれば、忍びにその動向を探らせ敵の裏を突いて、アヤを奪い返す。
「皆を広間に集めよ。アヤを攫った事、来世まで後悔させてやる」
静かな口調ではあるが、隣にいた秀吉が一瞬でも異論を唱えれば瞬時に首が床に転がり落ちる様な殺気を全身に纏い、信長は天主から広間へと歩きだした。