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恋に落ちて 〜織田信長〜

第40章 思惑



なんだ?

城の外が騒がしい

カッカッと急ぐ馬の蹄の音と、ザワザワと騒ぐ人の声。


また、どこかの国が寝返りでもしたとの早馬だろうか。


だがそんな事は日常茶飯事だ。


力を持たない小さな国は、いつ攻め滅ぼされるか分からないぎりぎりの状態で存在している。


だからこそ、強大な力に守ってもらいその領土の安寧を保っている。


家康が長きに渡り人質に出された様に、それは、時には身内を犠牲にしても。


領主に求められるのは、その同盟国が自国にとって有益であるかどうかを見極める洞察力と判断力。そして、揺るがない精神力。あとは、家臣に恵まれるかどうか。


どれが欠けても敵に付け入る隙を与え疑心暗鬼となり、判断を誤る。


俺自身も、自分の判断を信じ、振り返らず、尾張の小国からここまで上り詰めた。

ようやくここまで来た。


天下泰平の世まであと少し。


その暁には、アヤを......




「信長様っ!」

秀吉が声をかけることもなく、天主の襖をおもいっきり開け放ち、叫びながら入ってきた。

「騒がしいぞ秀吉」

相変わらず熱い男だ。たかだか小国が寝返ったくらいで。

息を切らす秀吉に目もくれず、信長は書簡にそのまま目を通した。


「アヤが、城下で攫われました!」


ピクリ、と書簡を持つ指が動き、初めて秀吉の方へと目を向ける。


「何?」


「場所は、先日まで探りをいれていた遊女屋です」


「護衛の者達はどうした」


「全滅と...思われます...」


「と言うことは、影が戻っただけか」


「はっ、」


影とは、二重に付けたアヤの護衛の事だ。

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