第40章 思惑
「んっ、んんんっ!」
抵抗する間も無く、二人組に引きずり込まれた私は、あっという間に足と手を縄で縛られ、猿ぐつわを噛まされて、畳の上へと転がされた。
二人組は、黒子のように顔を黒い布で隠していて誰かは分からないけど、体格から見て男だと分かる。
「アヤ様!おのれ」
「アヤ様をお助けしろ!」
外からは、私の異変に気づいた護衛の人達の声と刀の交わる金属音。
その音に、私を縛り上げた男二人も気づき、格子から外を覗き込んだ。
「くそっ、誰一人として生きて帰すな!信長への伝達を少しでも遅らせるんだ!」
私を縛り上げた男たちがそこにいる他の者に声をかけて、外へと飛び出して行った。
................私、攫われたんだ。
あまりの早業に、まるで映画の撮影でも見ているみたいで、自分が置かれている状況を把握するのに時間がかかった。
だめだ、逃げないと!
手足を縛られながらもジタバタと動くと、ドシッ、と何かを蹴り飛ばした感覚を足に感じた。
なに?何か足に.........
蹴ってしまった方に体を傾けて見ると、
「んんっ!!!!」
そこには、血を流し、息絶えた人、人、人.....
この店の人達だったのだろうか、煌びやかな部屋の内装には似つかわしく無い、畳の上に無残にも斬り殺され、捨てられた沢山の死体と血の海.......
「ふっ..........ぐぅ.....ぅ」
初めて見る無残に殺された死体に、恐怖で涙と吐き気が襲い、ガタガタと体の震えが止まらない。
何度も、信長様の戦に行く姿を見送って来たけど、いつも笑顔で戻って来てくれた。
私が怖がるから、途中で血を洗い流し、戦の話はせずにいつも普通でいてくれたから、戦国時代にいても、あまり乱世を感じることなく暮らせていた。
でも、殺されるって、こういう事だ。
乱世において、抗う術のない弱き者は、強き者に簡単に虐げられてしまう。
次は、私の番?
ダメ、逃げないと。
外にいるみんなと逃げないと!
両手足を縛られた身体をイモムシの様に引きずりながら、土間へと転がり落ち、そこからまた出口へと這って出た。