第39章 幸と信玄
「きっとまだいると思うぜ。嘘だと思うなら行って本人に確かめればいいだろ」
「でも、仕事だって.....」
お前は本当に素直で、
純粋すぎて、
バカだな。
何でそんなに思った事を隠す事なく顔に出す事ができるんだ。
何であっさりと俺の言う言葉を信じるんだ。
お前に何であんなにも護衛の者が付くのか今なら分かる。
敵とは言え、信長にちょっと同情するぜ。
「あの、もう行かなくちゃ。幸はまだ当分はこっちにいるの?」
赤くなった顔を手で仰ぎながら、アヤは立ち上がった。
「いや、明日にはもうここを発つ」
「そっかぁ、じゃあ次に会えるのは春かな?」
「あぁ、そうだな」
次に会った時、お前は同じ笑顔を俺に向けてくれるんだろうか?
向けてはくれないだろうな。
「幸に会えなくなるのは寂しいけど、体に気をつけてお仕事頑張ってね。あっ、道中気をつけて怪我もしないようにね」
本気で心配をしてくれるアヤに胸が苦しくなる。
「お前も、寄り道せずに帰れよ」
頼むから、そのまま城に帰るんだ。
「分かってるって。幸までお城のみんなみたいな事言わないでよ」
「お前危なっかしいからな」
本当に帰れよ!
「ふふっ、大丈夫だって。じゃあまた春にね、幸」
女のくせに、子供のように手をぶんぶんと大きく降って、アヤは店を出て行った。