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恋に落ちて 〜織田信長〜

第39章 幸と信玄



「相変わらずいい仕事してんなぁ」

幸はうんうんと頷きながら、着物を手にとって確認をした。


「いつまでこっちにいるの?また一週間位?あっ、まだ来たばっかり?」

久しぶりに会えた幸にテンションが上がって質問責めにしてしまう。



「おいおい一つづつ聞けよ。相変わらず落ち着きのねーヤツ」

受け取った着物を一枚づつ多当紙に包みながら、幸は苦笑した。


「ごめん。本当に久しぶりだから嬉しくて。また旅先で起こった面白い話を聞かせて」


行商を営なむ幸は、会う度に各地で起こった様々な珍事件やその土地ならではの面白い風習を教えてくれる。


「......あぁ、今回は何もねーな、わりぃ」

何だかいつもより幸の歯切れが悪い気がしたけど....


「あっ、そういえば佐助君は元気?」

あまり気にせずに違う質問をしてみた。


「おう、あいつもけんし...じゃなかった、上司にこき使われて大変そうだけどな」


「あっ、なんかそれ前に会った時に話してたよ。上司には苦労するって。でも、あいつもってことは、幸にも上司がいるの?」

流れの行商って、自営業みたいなものだと思ってたから、上司がいるなんて思わなかったな。


「っ、言い方間違えただけた。上司なんていねーよ。俺は、ただの流れの行商だ」

幸は、機嫌を損ねたみたいに少しバツが悪そうにしてプイッとそっぽを向いた。


「あっ、そうだよね。.......ごめんね。変なこと聞いて」


「お前が謝ることじゃねーよ。ホント間抜けな奴だな。そんなだから......」

言いかけて、ハッ、と幸は口をつぐんだ。


「......そんなだから何?なんか...今日の幸、変だよ?体調悪いの?」

お店に入った時も、いつもの幸なら直ぐに気づいて声をかけてくれるのに。

なんだか......

なんて言っていいのか分からないけど、変な違和感を感じた。


「なんでも....悪くなんかねーよ。それより、お前にまた仕立ての依頼だって、店主から預かってるから持ってくる。ちょっと待ってろ」


素っ気なく答えると、幸は店の奥へと入って行った。



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