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恋に落ちて 〜織田信長〜

第39章 幸と信玄




一旦針子部屋へと行き、仕立てた着物を持って城内へと出た。




木々の葉っぱも色づき、着物一枚では肌寒く感じるこの頃。

あと二月もすれば、安土も雪が降るらしい。


「気軽に出歩けるのもあと少しかな」

周りを山々に囲まれ、冬になると場所によってはたくさんの雪で覆われる安土の土地は、天然の要塞となるため、滅多なことでは戦は仕掛けられないのだと秀吉さんは教えてくれた。

また、湖からの物資のルートがしっかりと確保され、信長様の興した楽市楽座が功を奏しているいるため、冬場でも物資の供給が途切れることはなく潤っているのだそう。


つくづく信長様って凄い人だ。





着物を納める呉服屋へと到着し、暖簾をくぐった。


「こんにちはー」

お店に入り、いつも店の主人がいる方を見る。


「あれっ?」

目に映ったのは、いつもの呉服屋の店主ではなく、朱色の着物を着た若者。


「............幸?」


「...おっ、おーーアヤ、随分と久しぶりだな」

ぶっきらぼうだけど優しい声の主、幸が私に気づいて声をかける。


「幸っ!来てたの?」

久しぶりに会う幸に声が弾んだ。

「おぅ、本格的な冬入り前にこっちにも来ておきたくてな」

「そうなんだ。やっぱり、冬になったら暖かい地方へと商売に行くの?」

「あーまぁそんなとこだな。それより着物、届けにきたんだろ?」

手を出して、幸が着物を見せろと催促をしてきた。


「あっ、うん。これをお願いします」

針子仲間たちと仕上げた何着かの着物を手渡した。


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