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恋に落ちて 〜織田信長〜

第37章 都合のいい女



みんなが帰った後も、私はそのまま針子部屋にこもって仕事を続けていた。

針子の仕事は裏切らない。

どんな時も、大好きな布に触れて針を手に持って縫い物をしていれば、私は色んな事から解放されて集中する事ができる。


都合のいい女


正直、この言葉にどーーんと大きな衝撃は受けている。

けど、信長様を疑っているわけではないし、好きだから、都合が良くてもいいとさえ思っている。

こんな事をさっきの場で言ってしまったら怒られそうだから、あえて言わなかっただけで、それよりも、信長様が実はモテるんだという事実の方が大きなショックをもたらしていた。

だって、考えれば考えるほど、信長様がモテない理由がない。
顔が良くて背も高い。地位も名誉もある。私の知る限り一番強くて男気に溢れている。一見怖いけど、すごく優しくて笑顔を見たらそれだけで心臓が破裂しそうだ。

それに、散々遊び尽くしたであろう信長様は、女の人を悦ばす事も簡単で、みんなの言う通り、私なんて掌の上で転がされているに違いない。

「でも、いいんだ。好きなんだもん」

駆け引きなんてできないし、やり方もわからない。数多の女性の中で私が勝てるものはこの気持ちだけだから。

都合のいい女上等。

色々とざわざわした気持ちはここで落ち着いて、私はそのまま針子仕事に没頭した。

途中で、女中さんが何回か夕餉だ何だで呼びに来てくれたみたいだけど、完全に世界に入り込んだ私の耳には届かなかった。


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