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恋に落ちて 〜織田信長〜

第37章 都合のいい女



(城下はむやみに一人で歩きまわるな。特に遊女屋界隈は危険だ)

信長様に口酸っぱく言われていた事を思い出し、急いで来た道へと引き返そうとしたが、

「あれっ?信長様?」


一軒の遊女屋の暖簾の前に、見慣れた後ろ姿が。

「信長さっ....ま?」
ちょうど良かった。一緒に帰ろうと思い声を掛けようとするが........
よく見ると誰かと一緒にいる。

着物を着崩すように着た妖艶な美女に寄り添われ、何か顔を近づけて話をしているみたいだった。

「あれは、誰?」
独り言のように呟くと。

「ほぅ。あれは御館様か?」
背後から聞き覚えのある声が。

「みっ、光秀さん!」
声のする方に振り向くと、嬉しそうに口の端を上げた光秀さんが立っていた。

「何でここに?」

「なに、所用で近くまで来ていたんだが、思いがけない場所でお前の姿を見かけたものでな。そしたら、もっと面白いものを見れたようだな。」

ニヤリと、それはそれは嬉しそうに言う。

「うぅ〜光秀さん、面白がってますね。でも、信長様は仕事上あーいう事もあると言ってましたから、その言葉には乗りませんよ」

そう、先日信長様からも天下布武を成し得るまでは時間が欲しいと言われたばかり。いい気分はしないけど信長様の夢のため、私は支えると決めた。


「さぁ、どうかな。物は言い様だな。信長様も男だ。お前も上手く言いくるめられたものだ」


そんな言葉をお前は信じているのかと言いたげに、光秀さんの顔がニヤリと弧を描く。

(うー絶対からかって楽しんでる)

「私は信長様を信じてますから。きっとあれも仕事で何かあるんだと思います。光秀さんの想い通りには行きませんよ!」

プイッと光秀さんにそっぽを向いて、私は一人で来た道を戻った。

背後からは、クククッっと光秀さんの笑い声が聞こえた。

もうっ!ほんといじわる。

でも.......光秀さんのいじわるは、ただいじめたくて言っているのではなく、何か意図があって言っているのではと思ってしまうから、変に勘ぐってしまう。

「ダメダメ、引き込まれてはダメ」

頭を軽く振って邪念を取り払いお城へと戻った。

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