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恋に落ちて 〜織田信長〜

第36章 男のつきあい



信長様は何も言わず刀をすらりと抜いて家康の顔の前でその先を止めた。


「信長様、なにをっ!」
慌てて叫ぶけど、

アヤは黙っててと言わんばかりに家康が私を手で制した。


「家康貴様、俺のものを勝手に連れ出した覚悟は出来ておるな」


馬上から、怒りを含んだ信長様の声が静かな夜の街に響く。


「今夜は、客間に通しましたが、次回またアヤが泣くようなことがあれば、次は自室へと連れ帰ります」


目の前に光る刀に恐れることなく真っ直ぐに信長様を見上げて、家康は言った。


家康.....何言って...


「貴様血迷ったか」

信長様の片眉が上がり、更に不機嫌になる。


「俺なら泣かせません」

家康も負けじと言い返す。


暫く二人は睨み合い、



「ふっ、良い目だ。貴様の心しかと見せてもらった」


信長様は不敵に笑い、刀を収めた。



家康も、一瞬目を瞑りふぅーと小さく息を吐いた。



「アヤ帰るぞ」

信長様が馬上から手を差し出した。

「はいっ..............あ.....れ?」

歩き出したつもりが、グシャっとその場に座り込んでしまった。

「アヤ?」
家康がビックリしてる。


「どうした?」
信長様も訝しげな顔。


「あの.......こっ、腰が抜けました」

二人の余りにも緊迫した空気にビックリして腰が抜けてしまった。


「はぁ、立てる?」

家康が呆れたように手を差し出してくれたけど、


その前に体がふわりと浮いて、大好きな匂いに包まれた。


「のっ、信長様?」

「本当に貴様は手がかかる」


「っ....ごめんなさい」

信長様の首に手を回してぎゅっと抱きついた。


「このまま帰る」

「えっ!やっ信長様」

ジタバタするけどこんな時は絶対に降ろしてはくれない。

「家康、馬は明日貴様が届けよ」

「はぁ?何で俺が」

「命令だ」

「家康、ごめんね。ありがとう」

超面倒臭いと言った顔の家康にお礼を言って、私は抱き抱えられたままお城へと連れ戻された。

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