第36章 男のつきあい
「はぁ〜前も言ったけど、あんた頑張りすぎ」
「えっ?」
「つい最近も寝込むくらいあの人の事で落ち込んだんでしょ?何も言わずに抱え込んで寝込まれる方が男としては辛いんだけど、分かってる?」
「でも、私いつも迷惑ばかりかけてるし、現に今だって...」
「あんたの迷惑なんて、あの人にしたら何でもないと思うけど」
「でも、本当は私が嫉妬深くて、私だけを見てほしいなんて独占欲の強い女だって知ったら、呆れて嫌われちゃうかもしれないし」
あまり自分は、嫉妬とか独占欲とかは無い方だと、信長様を好きになるまでは思ってた。だからこそ、この心の変化と言うか、ドロドロした自分にまだ追いつけていないでいる。そんな心を信長様に見せても大丈夫なのだろうか。
自信なさげに俯いていると、
「あんたは思った事全部が顔に出るから、隠したって一緒だと思うけど」
「うっ、そうだよね.....」
でも、自信がない。
自分の気持ちには絶対の自信があるのに、あんな凄い人が私と一緒にいたいって言ってくれてる事でさえ、奇跡のようなのに。
「何でそんな風に考えるかな。あの人があんたに夢中だって事を知らないのはこの安土であんた位だよ」
ふぅっとため息を漏らしながら家康が話を続けた。
「この間の民衆の前での事もそうだけど、俺の知る限り、あの人が人前で嬉しそうにそんな事するなんて、あんたが来るまではなかったから」
「うそっ、だってあんなにいつもみんながいても御構いなしで...........その....」
「はぁ、そんな事も前のあの人からは想像できない、って言うか自分で言っておいて顔赤くするのやめなよ」
「うっ、ごめん。でも、女の人はたくさんいたでしょ?慣れてるし、その......」これ以上先の事は恥ずかしくて言えない
「あの人が女の人に手を出すのは、男の生理現象みたいなもので、それに信長様が望まなくても、相手からいくらでも寄ってくるからね。でも、あんたと一緒に過ごす様になってからは、あんたしか見てないと思うけど」
信長様に、愛されている事はわかってる。いつもいつも沢山の愛を囁いてくれて、心も体も信長様で満たされている事もちゃんと分かってる。