第36章 男のつきあい
「はい。これ飲みなよ」
家康の御殿へ着くと、家康の部屋ではなく客間へと通され、お茶を淹れてくれた。
「ありがとう」
今の家康の様に温かなお茶を一口飲むと、少し心が落ち着いて来た。
「私のせいで、家康を巻き込んでごめんなさい」
成り行きとは言え、信長様に逆らう様な行動を家康にとらせてしまった。
「別に、あの人はそこら辺は公私混同はしない人だから大丈夫。それに、あんたに巻き込まれるのはこれが初めてじゃないから」
「えっ?」
他になにか?
「やめてよ、その何かあった?みたいな顔」
はぁと大きなため息
「えっ、だって私...迷惑かけ......てま....す....よね」
そうだった。
さらわれた時も、またさらわれた時も、脱獄を手伝った時も、全ていつも武将の皆様には迷惑をかけっぱなしで..........
「うぅっ、重ね重ねごめんなさい」
自分のワガママっぷりにもうなにも言えず、ただ頭を垂れる他ない。
「ぷっ、ほんとあんたって、ばかで真っ直ぐで、向こう見ずな直情型だよね」
今日の家康は良く笑うなって言うか、笑われてるなが正しいかも。
「それ、褒めてないよね」
「いや、あんたらしいって言ってんの、あっ、お茶もっと飲む?」
空になった湯呑みに気づいた家康は、お茶を淹れなおしてくれた。
「なんか今日の家康、優しいね」
「はぁ?俺はいつだってあんたに優しいでしょ。じゃなきゃあんな斬られそうな空気感半端ない信長様に背を向けてまであんたを連れ出してないけど」
大きく目を見開いて何言ってんのって顔で家康は言った。
「そうだよね。いつも甘えてごめんなさい。さっきも連れ出してくれてなかったら、信長様に酷いこと言ってたかもしれない」
あんな風に、女の人に囲まれる信長様を見るのは初めてでびっくりしたし(他の武将たちはよく見るけど)女の人が信長様に触れた途端ぷちって自分の中の何かが切れて、怒りが爆発しそうだった。
さっきのシーンを思い出しながら、手に持つ湯呑みをぎゅっと握った。