第36章 男のつきあい
「ちょ、まって、家康、私......」
「なに、俺には愚痴をこぼせるのに、信長様には言えないわけ?」
立ち止まり、緑の綺麗な目が私を試すように見る。
「そ..んなこと....ないよ」
「じゃあ行くよ」
すーっと広間の襖を家康が開けた。
「..............っ」
思っていた通り(以上かも)な光景が目の前に広がっている。
みんなかなり酔っ払っていて、一部を除いて私が襖を開けて立っていても気づいていない。
着崩した着物の女の人達と、酔っ払った男の人達。
一緒に女の人とお酒を飲み合う人もいれば、一緒に踊っている人も、なんか、野球拳っぽい事してる集団に群がる人人人。
我関せず女の人には興味も示さず一人手酌酒の人も......
色々だ.....
確かに、こんな光景見ない方がいいなと思った。
政宗や秀吉さん、武将たちの周りには、さすが美人どころが押し合うように次々とお酌をしてその隙を狙っているみたいだ。
信長様は?
ちらりと上座の方へと目を向けると
「っ、........」
誰よりも沢山の女の人を周りに侍らせて、お酌をされお酒を飲んでいる。
ズキンと心が痛んだ。
やばい...見なかったことにして立ち去ろう
そう思った時、一人の女の人が、信長様の胸にしな垂れかかった。
「だめっ!」
しまった!と思って口を塞いだけど、時すでに遅しで、広間の全員が私を見た。
当然、信長様とも目が合ってしまったわけで......
「っ....ご、ごめんなさい」
慌てて頭を下げて広間から逃げ出した。