第4章 佐助登場
お城に戻ってからも、私は佐助君の話を思い出しながら、考えを巡らせていた。
理解は出来たけど、もっと聞きたいことが溢れてきて落ち着かない。
でもこの時代に、自分と同じ境遇の人がいると分かっただけでもひどく安心できた。
「幸と一緒に行動してるって言ってたけど、佐助君は私より四年もこの乱世を生きてきたんだ。しかも気に入ってるってなんて、すごいな」
ここに来て2ヶ月弱の私なんて、まだまだ佐助君の足元にも及ばないや。きっと凄く苦労したんだろうな。
「うーん。やっぱり聞きたいことが沢山ありすぎる。ワームホールの事も気になるし、何とかしてまた行く方法を見つけないと。あっそうだ!」
私は針子部屋にこもり、城下に行くための口実として、急いで着物を一晩で仕立て上げ、次の日も、その次の日も佐助君と話をするために呉服屋を訪れた。
何日か通う中で私が分かった事は、佐助君は私より四年前にタイムスリップをして、そこである武将の命を助け、そこからその武将の元で忍者修行をし、今は立派な忍者として働いているらしいって事。
そして、忍者をしながらもワームホールの研究を続けていて、そのワームホールの出現が近い事を発見した。そして、忍者の仕事でこの安土を訪れていた時に、私の噂を聞き付け、もしかしたらと思い、幸を通じて私に声をかけてくれたみたい。
「知れば知るほど凄いね。佐助君」
ただただ感心するばかりの私に佐助君が口を開いた。
「アヤさん、現代には帰りたくないの?」
「私は.........」
言葉に詰まった。
「もしかして、誰か好きな人がいるとか?」
どストレートに質問が投げかけられ、不意に、信長様の顔が浮かんだけど、
ふるふるふると頭を振りながら、
「そんな人いないよ。帰れるなんて思ってなかったから、ビックリしちゃって」
と話を誤魔化した。
必死で四年の歳月を生きてきたであろう佐助君に、信長様との事は知られたくない。
簡単に体を許し、籠の鳥となってこの乱世を生きているなんて知られたら、軽蔑されてしまうんではないかと思い、言う事が出来なかった。
佐助君は、暫く私をじっと見つめていたけど、
「分かった。返事は今じゃなくてもいい。時期が来たらまた会いに行くから、それまでは元気で過ごして」
そう言ってまた、店の奥へと消えて行った。