第34章 悲しみの先
心を取り戻しつつあるアヤを抱きしめながら暫く横になっていると、
城の外がやけに騒がしいことに気づく。
「何だ?外が騒がしいな」
着物を簡単に羽織り外を覗くと、城門の所に人集りが出来ている。
「何ごとだ」
見た感じ、武士ではなく民衆が押し寄せているように見える。
一揆でも起こったのかと思い、アヤにここから動くなと伝えて様子を見に行こうと思った矢先、
「失礼します信長様」
部屋の外から秀吉の声
「秀吉か、何事だ」
アヤがまだ一糸纏わぬ姿でいた為、襖越しで話をする。
「はっ、それが、アヤを心配した民衆達が、各々見舞いの品を持って城門に集まっておりまして」
「なに?」
アヤの方を見ると、秀吉が来たことに慌てて、襦袢を着だしていた。
「そのままそこで、詳しく話せ」
「はっ」
秀吉の話によると、
五日前から食事をあまり食べなくなったアヤを、女中どもが心配だと話しながら城下を歩いた所を、たまたま通りかかった城下の者が耳にし、そこから火がついた様に、アヤが食事も取れぬほど体調不良で寝込んで大変な事になっていると、安土中に広まり、それを心配した民衆どもが、病気が早く良くなるようにと様々な見舞いの品を持って詰め掛けているらしい。
なるほど、思わぬきっかけが舞い込んできた。
アヤの方を見ると、肩を震わせて既に泣いている。
「ふっ、どうするアヤ」
「..........たい」
「聞こえん」
「みんなに.....会いたい.......です」
「では、支度をせよ」
アヤは涙を拭ってコクリと頷いた。