第33章 愛するという事
アヤが、俺に本当の事を言いたくないのであれば、無理に聞くまいと思っていた。
今までの様に、時間が解決するであろうと思っていたが、次の日になってもアヤは元気を取り戻さなかった。
夕方、仕事を早く済ませ天主へ戻る。
部屋の前には、手のつけられていない膳が置かれたままだ。
部屋に入ると、朝出た時のまま、褥に横たわるアヤの姿が。
「貴様、昨日から何も食べておらんな。いや、一昨日からか。女中どもが心配しておったぞ」
一回り以上細くなったように見える後ろ姿に声を掛ける。
「食べたく....ありません」
もう、限界だ。貴様をこのままにはしておけん。
「そうか.....では、そろそろ何があったのかを話せ」
アヤの身体がぴくっと反応した。
「何も......ありません」
「なら、話させるまでだ」
アヤの顔の横に片手をつき、もう片方の手で帯に手を掛けた。
「今言う方が、身のためだぞ」
手荒な真似はしたくない。
「かまいません。どうせ私は.....」
天井を見つめたまま、言いかけた言葉を止めた。
「何だアヤ、言いたい事があるなら言え!」
貴様の心の内を見せろ!
「全部受け止めてやる、だから貴様の怒りを吐き出せ!その胸に溜め込んだものを全部だ」
アヤは、目を見開いてしばらく俺を見つめた後、その目から涙を溢れさせた。
「っ、どうせ私は、どこでも体を開いて信長様を誘う娼婦だから、信長様も私なんか簡単だって、そう思ってるんでしょ!」
やはり、じじいの放った言葉に囚われていた。