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恋に落ちて 〜織田信長〜

第32章 トラウマ



天主を出て廊下を進むと、
ドクンと、胸が嫌な音を立てた。


「っ........」
急に足を止めた私の手を、信長様が優しく握ってきた。

「あのっ、」

誰かが見ているのではないかと急に不安が襲い、
私は慌ててその手を振りほどいた。

「アヤ?」
怪訝そうな顔で信長様が覗き込む。

「ごっ、ごめんなさい。手が汗ばんでて、一人で歩けます」

汗なんてかいてないけど、とっさに嘘をついてしまった。

「何だ、そんな事気にならんが、まあいい。行くぞ」


歩き出した信長様の後について歩こうとするけど、

「⁉︎」
足が、動かない。


スタスタと進んでいく信長様。早く追いかけなくては。

でも..........


足がまるで床にくっ付いてしまったかの様に、動かなくなった。

次第に息が上がり、呼吸も苦しくなってきた。



「はっ............はっ、」

息を吸っても吸っても楽にならずおかしい。



「アヤ?」

信長様が私の異変に気付いて走ってきた。


「アヤ、どうした、息をしろ!」

息をしたいのに、空気が入って来ない


「はっ、はっ、はっ、はっ」

浅い呼吸もどんどん苦しくなってくる


「過呼吸だ」

信長様は私の顎を上げて口づけた

「はっ、やっ、信長様、こんなとこでやめて」

頭を捩って、口づけようとする信長様を拒む。

「すぐ楽にしてやる。力を抜け」

力で抑えられる様に再び口を塞がれ呼吸を奪われた。


手足の感覚が冷たくなっていく中で、信長様の唇と舌の温かさが息苦しさを段々と取り除いてくれた。

「はっ、はぁ、はぁ」


唇が離れ、信長様が力強く私を抱きしめた。

「はぁ、もう、大丈夫です。はぁ、すみません」


「体調が悪いなら無理をするな、朝餉はここに運ばせる」

信長様は切なそうに私を見て、何度も頭や頬を撫でてくれた。

「私は、はぁ、大丈夫...ですから、はぁ、信長様はいって..くだ..さい。はぁ、はぁ」


「俺も今朝はここで食べる。昨日の残務処理があって今日も一緒にいてやれん。せめて朝餉くらいは一緒にいてやる」

私を抱き抱えると、再び天主へと戻った。

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