第31章 見えない壁
「あーでも、どこでも体を開いてって、上手いこと言うなぁ..............強ち間違ってないし」
つい先日も湖岸で抱き合った。
城の至る所で口づけは当たり前。
救援活動先の温泉でも抱き合ったし、湯浴み中の営みなんて、もう当たり前の中に入りそうだ。
「あんなに秀吉さんに注意してもらってたのにね。言うこと聞かないからこんな事になるんだよ。ふふっ」
溢れ出る涙に比例する様に、乾いた笑いが自分から起こる。
誰かが言ってた。
「悲しすぎると笑えてくる」んだと。
でも、こんなに涙が出るなんて聞いてない!
「っ........っく、」
悔しい!
悔しい!
悔しい!
何も言い返せない自分が悔しい!
分かってる。私じゃダメだって分かってる。
姫でもなければ武家の娘でもない。
何の後ろ盾もなければ、教養すらも持ち合わせていない。
「っ、っく、う〜」
腕を噛んで涙を堪えてもやっぱり涙は止まらない。
ずっと恐れていた、気持ちだけでは乗り越えられない壁にぶつかった気がした。