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恋に落ちて 〜織田信長〜

第30章 三度目



「どこへ行くんですか?私、草履も履いてません」

文字通り、着の身着のまま連れてこられた私。

「くっ、そうだな」

信長様はキョロキョロする私を見てずっと笑っている。


すっかり日も暮れた頃、城下を抜けて湖岸へと連れてこられた。

「湖?」

暗くてよく見えないけど、サクサクと砂浜を歩く蹄の音と、打ち寄せる波の音が聞こえる。

「もう少しで目が慣れてくる」
信長様は静かに言うと、馬の動きを止めた。

少し経つと、目が慣れてきた。


「わぁキレイ!」

夜空一面に広がる星空が湖面に映って、360度の星の世界が広がった。

「すごいっ、プラネタリウムみたい」

「また、訳の分からん言葉を」

「私の住んでた場所では夜もずっと明るいので、星を見ることはほとんど出来ないんです。プラネタリウムと呼ばれる場所で、映し出された星空を見て楽しむくらいで、天の川があんなに明るいなんて初めて知りました」

普段は安土城も明るくライトアップされているからあまり星を見ることなんてなかったけど、今、目の前に広がる空は、写真家の撮ったどんな星空よりも綺麗で、ブルブルっと身震いをしてしまった。

信長様は馬から降りると、近くの木に括り付けて、私を降ろしてくれた。

「砂浜なら、裸足でも構わんだろう」

そう言いながら自分も草履を脱いで、裸足になった。

ごろんと砂浜に寝転がって、満天の星空を眺める。

「あっ流れ星!信長様っ、願い事」

手を合わせて必死で願い事を心の中で唱えた。

「ふっ、得体の知れぬものに何かを願ったことなどないが、貴様は何を願ったのだ」

寝転がる私に覆いかぶさるように信長様が覗き込んで、合わせていた私の手を握った。

「ずっと、信長様といられますようにって」

見つめられるだけでドキドキと心臓がうるさくなる。

「そんなこと、星に願わずとももう叶っておる」

笑いながら、ゆっくりと信長様の顔が近づいて、優しい口づけが落とされた。

「ふっ、んっ」

こんな神秘的な星空の下だからか、いつも以上に緊張して心臓が飛び出してしまいそうだ。

「くくっ、胸の音がうるさすぎだ、いつになったら慣れる」

信長様が苦笑する。

「っ、そんなの無理です。信長様にドキドキしなくなる日なんて来ませんから」

昨日よりも今日、今日よりも明日はもっとあなたを好きになる。

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