第30章 三度目
「アヤ様のせいではありません。むしろ、アヤ様のおかげで、今まで見えなかった城下の不備が浮き彫りにされて、対策を練り直すことができたのですから」
「でも、三成君一人で大変じゃない?」
「私一人ではありませんよ。秀吉様は主に港方面の強化を。
家康様と政宗様は城下への出入り口となる街道とその裏道の実態調査を。
光秀様は、城下に潜む裏社会の取り締まりの強化を。
そして信長様は、その全てを把握して指揮を取られています。
アヤ様が一日も早く外出ができる様に、私達も頑張りますね。だから、アヤ様も頑張ってください」
「.........................」
さっき、
光秀さんに投げ飛ばしてもらって良かった。
逆に、全然投げられ足りないくらいだ。
本当に、私は信長様の一体何を見てるんだろう。
最初から、信長様に勝てるわけない。あんな器の大きな人に、勝てるわけがないんだ。
信長様は私が本当に嫌がる事はしない。そんな事分かってるのに。一生懸命、弱点なんか探したりして.........
「ほんと、最低」
大きく深く反省をしながら天主へ戻る。
信長様は机に座ってお仕事中だった。
せめて邪魔をしないようにゆっくりと隣の部屋へ移ろうと足音を立てずに歩いた。
「何だ、攻撃はせんのか」
不意に声をかけられ、信長様の方へ振り返った。
「っ、あれはもうやめます」
信長様は、一瞬驚いた顔をして手を止めたけど
「そうか。外出を諦めることになるがいいのか?」
また、書き物をする手を動かしながら私に聞いて来た。
「はい。私に残された選択肢はもともと二つしかなかったんです」
「二つだと?言ってみろ」
「一つは、信長様との恋仲をやめて、狙われなくてもいい様にして、思いっきり外出をすること」
「もう一つは何だ」
「もう一つは、ずっとお城で信長様と恋仲を続けて、外出は諦めることです」
「で、貴様はどっちを選ぶ」
信長様は机から立ち上がり、こっちへと歩いてくる。