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恋に落ちて 〜織田信長〜

第30章 三度目



「はぁ、あんたほんとバカ」

大きく、分かりやすいため息をついた家康。

「そんなはっきり言わなくても」

「目の前の功を焦って、まんまとあの人の罠にはまったね」

薬研をひく手を止めて立ち上がると、薬棚から薬壺を一つ持ってきた。

「これ、持ってけば?」

「何?何かの薬?私体調は悪くないよ?」

不思議に思いながらその薬壺に手を伸ばすと、

「これを信長様に飲ませれば、暫くは体が痺れて動けなくなるから、その隙を狙ったら?」


「⁉︎」
余りにも恐ろしいことを言うから手が一気に引っ込んだ。

「涼しい顔して怖いこと言わないでよ、冗談でもびっくりしたよ」


「こっちはいたって真面目だけど、あんたそんな人のいい事言ってたら、一生無理だよ」

家康は呆れたように大きなため息を吐きながら、薬壺を棚に戻した。

「だって、勝つなら堂々と勝たないと意味がないでしょ?だから、信長様の隙ができるような弱点みたいなものを家康が知ってたら知りたいなぁって思っただけ。でも、心配してくれてありがとう」

「あんたって、ほんと底なしのお人好しだね。だけど、何考えてるかわからないあの人にも、この半年で弱点ができたみたいだよ」

「えっ、そうなの?半年ってここ最近だよね」

直ぐにでも聞きたくて、身を乗り出して家康に近づく。

「ほんとバカ。それくらい、ちょっと考えれば分かるでしょ」

忙しいからもう出てってと素気無くされて、私は教えてもらうことができずに部屋を出た。


でも、弱点があることが分かった。
後はそれを光秀さんから聞き出そう。



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