第28章 団子より花
(へっ?何!)
口を手で塞がれ、路地裏にある一軒の建屋の中に連れ込まれた。
(あれ、これヤバイやつだよね)
「はっ、離してください!」
慌てて手を振りほどいて相手を叫び見ると、
「久しぶりだな、お姫さん」
浅黒い肌にピアスの男が不敵な笑みを浮かべていた。
「.....っ、毛...利、元就.......!」
「ご丁寧に名前を全部呼んでもらって悪いな」
「............これ以上近寄らないで」
(どうしよう、逃げなくちゃ)
「まぁ、そんな警戒しなさんなって、取って食いやしない。むしろ大声を出したら、またお姫さんの護衛の者達が路地裏に転がることになるぜ」
「っ......」
それは本当に困る。前回私をさらった時も、この人は一人で五人の兵を一撃で倒してしまったと聞いた。またそんな事になったら........
「また、私をさらって交渉するつもりですか?」
ジリジリと、後ずさりながら元就を睨む。
「そうと言ったらどうする?」
後ずさる私を追い詰めながら楽しんでいる元就。
「私、あの頃とは違って護身術も少しは身に付けたし、あなたの思い通りにはなりません」
負けじと最近覚えた型を構えてみる。
「お前、俺相手に戦おうと思ってるのか?はっ、傑作だ」
楽しそうに元就さんが構えるでもなく言う。
「いいぜ、どこからでも来いよ」
「.......っ」
全然どこから攻めていいのかも分からない。
でも、出口は彼が立ち塞いでいるから、とりあえず思いっきり突き飛ばして逃げようと、思いっきり彼にぶつかって行った。
「おっと、」
わざとらしく大きく私の攻撃を避けて、後ろから抱きしめるように動きを封じられた。